西洋医学と漢方医学の「冷え症」
西洋医学の検査では異常が見つからない「冷え症」も、漢方医学では重要な病態ととらえ、治療が行われてきました。
西洋医学では、「冷え症」の原因を以下の様に考えます。
体質、骨格の問題
筋肉は熱を産生します。
運動をして脂肪を筋肉に変えると産生される熱量が増え、冷え症が改善されます。
自律神経の乱れ
暑いと自律神経の働きにより、末梢血管が拡張したり、汗となって体から熱が放散されます。
寒いと自律神経の働きにより、末梢血管が収縮し、熱の放散が抑えられます。
ホルモンは自律神経の働きに影響を与えるので、ホルモンバランスがくずれやすい月経前や更年期には冷えを感じやすくなります。
また、ストレスで自立神経の働きが乱れて体温調節がうまくいかなくなるのも、冷えの原因です。
漢方医学では、病態をとらえるために「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という概念があり、これらがバランスよく体内を巡っている状態が健康で、これらのバランスが崩れた状態から様々な病気や症状が起こると考えられています。
「冷え症」も例外なく、この「気・血・水」のバランスの乱れが原因の一つです。
「気」とは生命エネルギーや精神状態を表します
気力が低下している状態を「気虚」
気が滞りイライラしている状態を「気滞」と言います。
自律神経が乱れ、冷え性の原因となります。
症状
疲労、精神不安定、イライラする、食欲不振、便秘、下痢など
漢方薬
人参湯、補中益気湯、加味逍遥散、四逆散、十全大補湯 など
「血」 とは血液やその流れを表します
血液が不足している状態を「血虚」、
血液の流れが滞っている状態を「瘀血」と言います。
抹消に血液が行かず、四肢等に冷えを感じます。
症状
手・足・腰の冷え、頭痛、腰痛、月経不順、下腹部痛、皮膚の乾燥、便秘 など
漢方薬
苓姜朮甘湯、当帰四逆湯、当帰芍薬散、温経湯、桂枝茯苓丸、十全大補湯 など
「水」 とは汗、唾液、消化液、尿、リンパ液などの体液を表します
水分代謝が滞り、余分な水が溜まっている状態を「水毒」と言います。
溜まった水は、体を冷やします。
症状
神経痛、関節痛、腰痛、四肢のしびれ、頭痛、めまい、下痢 など
漢方薬
五苓散、苓桂朮甘湯、猪苓湯、五淋散、麻杏甘石湯、越婢加朮湯、防已黄耆湯 など
「冷え症」から来る病気
肥満症、片頭痛、夜尿症、腰痛、更年期障害、不妊症、流産、下肢浮腫、坐骨神経痛、痔、冷えのぼせ など色々ありますが、今回は、冷え症で低体温となり免疫力が低下することに焦点を当てたいと思います。
免疫力とはどんな力なのでしょうか。
私たちはウイルスにすぐ感染してしまう人、
ほとんど風邪を引かない人、
病気をしてもすぐに回復する人と、様々です。
私たちの体は、外敵(ウイルス、細菌、カビなど)が体内に侵入すると、体は異物とみなし攻撃してやっつけます。
そして外敵だけでなく、体内でできた老化細胞やガン細胞(健康な人で毎日3000~6000個のガン細胞ができると言われています。)を日々、排除しています。
このように、異物を攻撃し、排除する力を免疫力といいます。
免疫力の高い人は病気になりにくく、また病気になっても回復が早いのです。
「冷え症」と「免疫力」の関係
健康な人の体温は約36.5℃ですが、近年、冷え症で36℃以下の低体温の人が急増しているそうです。
体温36.5℃から、たった1℃下がるだけで、免疫力は37%低下すると言われています。
免疫力の低下で
・細菌やウイルスなどの感染症にかかりやすくなります。
・ガンは低体温を好みますので、ガン細胞ができやすく増殖しやすい環境となります。
・免疫系のくずれにより花粉症などのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患になりやすくなります。
その他にも、冷え症(低体温)は、肥満の原因や肌荒れの原因にもなり、悪いことずくめなのです。
体を温める生薬
腹部内臓を温める作用のある薬物
乾姜、附子、肉桂、蜀椒、茴香、呉茱萸など
四肢、体表の血行を良くし、外表部を温める薬物
桂枝、当帰、川芎、細辛、麻黄、附子など
上記の生薬は体を温めると言ってもそれぞれに作用が異なります。
冷え症のお薬と言っても、お一人お一人の体質が異なりますので、加美漢方薬局ではそれぞれの症状に合わせて適切な漢方薬を選択します。
乾姜とは、生姜を天日干しして乾燥させたものです。
体が冷えたな。と思う時は、お茶や紅茶に生姜をすって入れるだけでも温まります。
結構美味しいのでお勧めです。
水分の取り過ぎは体を冷やす!?
メディアでは1日2Lの水を飲むようになど、水を多く摂取すると血液の粘度が下がり、体に良い。と言われていますが、それを忠実に守り、水分過多で冷え性になっておられる方を多く見受けます。
水分は不足してはいけませんが、余分にとりすぎても良くありません。
体温は36.5℃、水は常温でも10~20℃。
夏はまだしも、冬は特にこの温度差は体を冷やし、体は熱を産生させるためにエネルギーが必要になります。
食事からの水分もありますので、普通の生活での1日の水分量は、人によって違いますが、夏場で1.5L、涼しい季節や冬場では0.5~1Lが適切だと思います。
体を温める入浴法
体が温まるためには、血管が拡張し、血行が良くなり、全身に血液がくまなく流れなくてはなりません。
副交感神経が優位になると、体の緊張がほぐれ、血管は拡張します。
副交感神経が優位になる温度は、40℃を超えない、ぬるめの湯と言われています。
40℃を越えない、ぬるめの湯で、10~15分の半身浴(みぞおちのあたりまで湯につかる)がお勧めです。
上半身が寒く感じるときは、乾いたバスタオルを肩からかけると良いです。
ラベンダーなど自然の入浴剤もお勧めです。
ラベンダーは副交感神経の働きを活発にし、全身の温め効果とリラックス効果で快眠をもたらしてくれます。
皆さんもお気に入りの入浴剤を探してみて下さいね。
冷え症には漢方薬がたいへんよく効きます。
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