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消化器疾患

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシア

長引く胃の不調で胃の内視鏡検査を受けたけれど、胃に何の異常も見られない方は多いです。

昔は慢性胃炎や神経性胃炎といわれていましたが、今は機能性ディスペプシアと診断されます。

機能性ディスペプシアの症状には、食後の胃もたれ、胃痛(みぞおちの痛み)、食後の早期膨満感、吐き気、ゲップ、腹部膨満感、胃の不快感、食欲不振などがあります。

胃の働きとは

初めに胃の働きからお話します。

  1. 食事をすると胃の上部が膨らみ、食べ物が胃に入ります
  2. 食べ物を溶かすため、胃壁から胃酸が分泌されます
  3. 胃は伸び縮み(蠕動運動)して、食べ物を胃酸と混ぜ合わせ粥状にします
  4. 粥状になった食べ物を十二指腸に送ります

このように、胃は食べ物を吸収できる状態まで小さくします。
① に異常が起こり胃の上部が十分に膨らまないと、すぐにお腹がいっぱいになり早期膨満感などの症状が出ます。
②に異常が起こると胃が胃酸に対して敏感になり過ぎ、胃酸の量にかかわらず痛みを感じてしまい胃痛などの症状が出ます。
③④に異常が起こると食べ物が胃から十二指腸に送られるのが遅くなり、胃もたれなどの症状が出ます。

漢方医学での考え方

漢方医学では、このような異常が起こる原因を次のように考えます。

1. 冷えによるもの

慢性的な冷えによるものではゲップや空腹時痛が多く、漢方薬は安中散や五積散を中心に処方し、胃を温めて痛みを除きます。

安中散(桂枝、良姜、茴香、延胡索、縮砂、甘草、牡蛎)

  • 桂枝、茴香、良姜、延胡索、縮砂・・・温めて胃痛を除く
  • 良姜、縮砂・・・悪心、嘔吐を止める
  • 牡蛎・・・胃酸を抑える

五積散(白芷、川芎、甘草、茯苓、白朮、当帰、桂枝、芍薬、半夏、陳皮、枳殻、麻黄、蒼朮、桔梗、乾姜、厚朴)

  • 当帰、白芷、川芎、桂枝、麻黄・・・血行良くして温める
  • 桂枝、乾姜・・・温めて胃痛を除く
  • 蒼朮、白朮、茯苓、厚朴・・・胃内の過剰な水分を除き、胃の働きを良くする
  • 半夏、陳皮・・・悪心、嘔吐を止める
  • 枳殻、厚朴、芍薬、甘草・・・痙攣を除き、胃の蠕動運動を整える

さらに、胸やけや酸っぱいものが上がってくる時には、黄連、山梔子の入った黄連解毒湯を加えます。

2. ストレスによるもの

胃の働きは自律神経によってコントロールされていますが、ストレスなどで自律神経のバランスが乱れると、胃は緊張し、痙攣をおこします。これを気滞といいますが、漢方薬は四逆散を中心に処方し、ストレスからくるイライラ、緊張を鎮め、胃の痙攣を除きます。

四逆散(柴胡、枳実、芍薬、甘草)

  • 柴胡、芍薬・・・ストレスによるイライラ、緊張を鎮める
  • 枳実、芍薬・・・胃の蠕動運動を整える
  • 芍薬、甘草・・・胃の痙攣を除く

3. 体のエネルギー不足によるもの

エネルギーが不足すると体が疲れやすく、胃の消化吸収機能も弱くなり食欲不振になります。エネルギー不足を気虚といいますが、漢方薬は四君子湯を中心に処方します。食欲がなければ四君子湯に半夏、陳皮を加えた六君子湯を処方し、体の元気を増し消化吸収機能を良くします。

六君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草、半夏、陳皮、生姜、大棗)

  • 厚朴・・・胃腸の痙攣を除き、蠕動運動を整える
  • 半夏、生姜・・・悪心、嘔吐を止める
  • 茯苓、紫蘇葉・・・ストレスによるイライラ、緊張を鎮める
  • 厚朴、茯苓、生姜・・・胃内の過剰な水分を除き、働きを良くする

ダンピング症候群や疲労、倦怠感を伴う時は、六君子湯に補中益気湯を加えます。

補中益気湯(四君子湯+黄耆、当帰、陳皮、柴胡、升麻)

  • 四君子湯・・消化吸収機能を亢めて食欲不振を改善する補気作用
  • 黄耆、柴胡、升麻・・・胃腸の筋肉が弛緩して下垂したものを、元気を補うことで改善する
  • 陳皮・・・胃の緊張を除き、蠕動運動を整える
  • 軟便や下痢を伴う時は、六君子湯に人参湯を加えます。

人参湯(人参、乾姜、白朮、甘草)

  • 人参・・・みぞおちあたりの心窩部痛を除く
  • 乾姜、甘草・・・お腹を温める
  • 甘草、白朮・・・胃腸の働きを良くする
  • 白朮・・・胃内の過剰な水分を除き、腹痛、下痢を止める

加美漢方薬局
味好俊治


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